本研究は、技術システムの安全形成のための組織プロセスに関する理論的・経験的研究である。技術と組織との関係についての組織理論の二大潮流である本質主義的アプローチと構築主義的アプローチの得失を吟味し、その建設的な結合である「安全な技術システムの社会的形成」パースペクティブを分析枠組として提示した。それを使って、日本の高速鉄道、航空管制、原子力発電などの事例研究を実施し、そこから高度な安全技術と「高信頼性組織」の組合せが、競争圧力や利害関係のもとで、かえって潜在的な物的危険性を高める作用を見出した。また、技術と組織プロセスの分析において物的存在や制度的・構造的要因に注目することの意義を明らかにした。
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