本年度は,課題研究の最終年度となるため,(1)分析枠組みを提示した論文のまとめ,(2)国内外の自動車部品サプライヤーの調査,(3)連携に関する文献調査を中心に研究を行った。 (1)前年度までに,学会発表で自動車部品サプライヤーの連携を考察する分析枠組みを議論してきた。今年度は,この枠組みをまとめた論文を仕上げた。これにより,さまざまなケースを時系列的に把握できるようにした。論文では,戦略論的側面,社会学的側面,中小企業論的側面からサプライヤーの連携をとらえた。戦略論的側面はサプライヤー関係に注目した議論であり,社会学的側面は交換関係や取引自体を社会関係に注目した議論,そして中小企業論的側面では,サプライヤーが部品供給する立場に関する議論を援用して論文をまとめた。 (2)国内外のサプライヤーの調査を引き続き行った。本研究課題にある中国・九州地域の部品連携の急速な進展は見られないものの,系列を超えて部品取引をしようとする活動について,中国地域のサプライヤーを中心に調査を行った。特に海外では,新たな部品取引形態として,最初は国内の「系列」が影響するものの,その後,個々の企業の成長は系列以外の相手との販路拡大に依存することが分かった。今後,これらの形態がHV/EV関連部品において,どのような関係構築がなされているのかを考察する。 (3)分析枠組みを補強するために,主に連携に関する文献レビューの蓄積を行った。部品取引は社会学的にみると交換関係に他ならない。本研究で対象とする中国・九州地域におけるサプライヤー間の社会的な関係を考察する基礎を固めた。
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