1 2010-2012年度の3年間に海南島を訪問して、日本軍の海南島占領時に強制労働、性暴力、虐殺などの被害を受けた現地住民から聞き取りをし、その成果を「アジアの植民地支配と戦後日本の歴史認識・研究成果報告書」(1-118頁)にまとめた。文昌市金牛流坑村、瓊海市白石嶺村、翁田鎮深嶋村、欄洋鎮洋龍村、東成鎮水流村、光坡鎮港坡村などで、日本軍が村をどのように襲撃し、村民がどのように殺害されたのかについて生存者から詳細な状況を聞き取ることができ、日本軍が非戦闘員を無差別に殺害した実態が明らかになった。 2 日本軍の海南島占領期以前、および占領期中に日本の学術研究者が団体及び個人で行った海南島の数多くの学術調査研究について、報告資料を収集し、それらを分析した。その結果、これらの学術調査が日本による海南島の植民地主義的統治と密接に連動し、これらの学術調査が海南島の資源、各種産業、土地、労働力を日本国家の資産としていかに効率よく開発するかというまなざしで行われていたことを究明した。とくに先住民の労働力をどのように動員するかという関心から先住民族の民族調査を行った尾高邦雄の仕事を中心に考察した。その成果が「海南島における日本人の「学術調査研究」と植民地責任」近畿大学日本文化研究所編『肯定と否定の文脈』所収、である。 3 日本軍が海南島で犯した犯罪行為についての歴史の忘却が戦後日本の社会認識にどのような作用を及ぼしたのかについては、福島の原子力発電事故と歴史認識というテーマで、戦後日本が国内で過疎地に原子力発電を誘致することによって事実上の国内植民地を再生産したこと、海南島住民の生活と土地と生命を根こそぎ奪い去る行為が福島の核爆発において再現されたことを論じた。この成果が「福島の核爆発と歴史を見る眼」竹内常善・斉藤日出治編『東日本大震災と社会認識』ナカニシヤ出版、2013年3月所収、である。
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