本年度は、次年度以降の本調査に向けた準備として、(1)地方中核都市に位置する松山大学・弘前大学・金沢大学での学生、教員への聞き取り調査、(2)連携研究者と協力して全国27大学を対象とした予備的質問紙調査、をおこなった。 (1) 聞き取り調査からは、いずれの地方都市の大学生においても、インターネット等の情報通信技術が就職活動に欠かせないツールとなっているものの、利用するサイトや情報入手-交換の方法等にはいくつか特徴的な違いがうかがえた。また、サイトだけでなく、対人的なネットワークから得られる情報、および心理的サポートも就職活動のうえで小さからぬ役割を果たしており、趣味を通じてたまたま知り合った相手との関係がネットを介して維持され、結果的に、その知己の住む都市の企業への就職が促されることになったケースも見受けられた。 (2) 質問紙調査については、データクリーニングを終え、これから本格的な分析を進める段階だが、大学間の単純比較を軸とした予備的分析の結果からは、パーソナル-ネットワークの規模、一般的信頼、互酬性などの社会関係資本(social capital)に関わる項目においても、「将来就きたい職業が決まっている」「好きなことややりたいことを仕事にしたい」等の就職関連意向においても、やはり違いがあることが確認された。これらについて、多変量解析を用いて、より詳細な分析をおこない、その結果の一部は日本社会学会の次回(第84回)大会での報告を予定している。
|