大学生の就職活動およびその結果(内定状況等)に及ぼすオンライン/オフラインの社会関係資本の効果を明らかにするため、一昨年度に第1波(就職活動直前~最初期)を、昨年度に第2波(就職活動終了期)の質問紙調査を実施した。研究最終年度にあたる本年度は、それらのデータの分析を進め、結果を学会等で報告するとともに、第3波として就職後の状況を把握するためのフォローアップ調査をおこなった。今回の調査は、第2波調査の有効回答者559名を対象として、2013年11月に質問紙を郵送配布、翌年1月までに郵送回収、437名の有効回答を得た(有効回収率78.2%)。多くの学生が卒業後に転居していたにも関わらず、約8割という高い回収率を得られたことは、電子メールによる居所の確認・追跡等々の調査手法のくふうによる成果と考えられる。調査方法論上の実績のひとつとして付記しておきたい。 第2波時点の内定状況と第3波時点の仕事・職場での状況との関連を分析した結果によれば、一般に予想されるように、第2波時の内定先が志望どおりであるほど、第3波時における仕事内容、給与・福利厚生、職場での人間関係等に関する満足度が高く、ひいては仕事・職場への全般的満足度も高い傾向にあった。また、多変量解析の結果によれば、内的先が志望どおりであったかどうかは、現在の仕事内容や給与・福利厚生、上司との人間関係等に関する満足度を介して、間接的に、仕事・職場への全般的満足度や、今の勤め先で働き続ける意向を高める効果をもつが、直接的には有意な効果をもたない。このことは、不本意な内定先であれ、入社後の仕事内容や職場環境とのマッチングがうまくなされれば、離職につながりにくい可能性を示唆していよう。加えて、大卒新入社員にとっては、上司との関係性が職場での社会関係資本として重要と考えられる(一方で、同僚や先輩との関係は、仕事・職場への全般的満足度等と有意な関連をもたない)。
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