研究概要 |
本研究の目的は、算数・数学科における「証明・説明」に関する児童・生徒の理解の様相を明らかにし、「証明・説明」する能力の育成を重視した幾何教育の系統について理論的・実証的に明らかにするとともに、ある性質や方法を「発見し証明する過程」を重視した授業を実現する具体的方策を提案することである。今年度は以下の点について研究を進めた。 1.図形領域において扱われる性質等に関して、その学習を「発見し証明する」過程をとるように構想した展開事例を、研究協力者の協力を得て多々集積した。 2.中学校第2学年での「三角形の相似条件の利用」の授業研究を、「発見し証明する過程」を重視して行い、生徒の思考の様相や学習問題の適否について検討した。そこでは生徒の意欲的な追究活動が観察された。 3.共同研究者であるKeith Jones(Southampton Univ.,UK), Taro Fujita(Plymouth Univ.,UK)の両氏と共同で一昨年度・昨年度に行ってきた日英両国の授業についての観察や協議に基づいて、今後の幾何教育に関する研究課題の焦点化を図った。そして、それらを2012年7月に開催された第12回数学教育世界会議(ICME12)、そして第36回数学教育心理学会(PME36)において発表・提案した。そこでは特に我々は、数ある論点の中でも,数学的な定義,数学的な表現,及び教師による指導の形態、の3点が重要であると規定している。そして、これらの点に関して幾何学の実践・研究を展開する機会を設け、国際的な調査を進めていくことの意義についても指摘した。 4.「発見し証明する過程」を詳細に検討し、授業展開を構成する上での基本的な考え方を明らかにした。例えば、ある条件を満たす図形を作図する方法をいろいろと考えることは、命題の仮定を見出す活動になっている、としてその過程を位置づけた。
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