本研究の目的は、日本人の高校生から大学生の論述文において話しことばが無自覚に用いられている実態について明らかにし、その問題解決のために単語の文体について明確な位置づけを図り、それに基づき実際の指導教材を開発するとともに、その指導法について実践的に研究を行うことである。 1.平成22年度は、研究の資料となる高専生及び外国人留学生の論述文の収集を行った。高専生の資料としては教育のあり方に関する小論文600字、80名分を収集し整理する一方、外国人留学生については研究協力者が所属する国立大学留学生センターで初級から中級の授業で書かせた作文・小論文を収集し、整理を行っている。前者からは日本語が母語であるために語彙・表現上の多様性、後者からは日本語が外国語であるために文法・語彙上の誤りなどを指摘することができた。これらは論述文の言語表現の実態把握資料として有益であり、次年度は高校生、大学生の論述文を追加収集する予定である。 2.次に、上記1で行った話しことば調査であるが、「です・ます」体の使用、モーラ数の追加・脱落、音便化、終助詞の使用など多岐にわたる表現は「話し言葉コーパス」に照らし確認されるものである。いっぽう、単語の文体という観点からは、俗語体、口頭体の使用が注目された。本研究成果は論述文指導のあり方を考える際に極めて有益である。また、語種として和語、漢語、外来語、混種語などと単語の文体との相互関係について明らかにすることも実用性が高く極めて重要である。
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