有理数体に1のべき根をすべて添加して得られる代数体を k とし,k の最大不分岐ガロア拡大体のガロア群の構造について考察した。k の最大不分岐可解拡大体のガロア群については,内田興二氏により,その位相群としての構造は完全に決定されている。ガロア群が非可解な拡大体の例については,かなり以前にいくつか結果を得ていたが,今年度は,その内の一部をかなり強めることができた。 まず,以前の結果は次のとおりである。最も以前の結果(の少し弱い形)は,p を 5 以上の素数とするとき,k の不分岐ガロア拡大体で,ガロア群が PSL_2(Z/pZ) と同型となるものが無数に存在する,というものである。これは,有理数体上の特殊な楕円曲線の p 等分点を用いて示されるが,その方法ではすべての p べき分点を用いることができず,したがってガロア群が PSL_2(Z_p) と同型となる拡大体を得ることはできない。しばらく前に,内田氏の結果を用いると,ガロア群が SL_2(Z_p) と同型となる拡大体を得ることができることに気づいていたが,今年度は,このような拡大体が無数にしかも強い意味で独立に得られることを示すことができた。具体的に述べれば次の通りである。p を 5 以上の素数とするとき,k の不分岐ガロア拡大体で,ガロア群が SL_2(Z_p) の可算無限個の直積と同型となるものが存在する。 この結果は,これまでの結果と,SL_2 の群論的性質(主に Serre による)を用いて示される。
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