研究概要 |
「類数1の実二次体は無限に多くあるだろう」と主張するガウス予想(1801)を解くために, 河本・冨田(2008)は「極小型実二次体」という概念を導入した. その概念は, 実二次体全体をある実二次無理数の連分数展開の周期で分類し, 各周期ごとにその基本単数と類数を調べるという観点に基づいている. 5億の範囲の数値データを使って, 連分数による類数1の実二次体の無限族の抽出方法を提唱することができた. 詳しくは各周期における最小元が類数1の極小型実二次体を与える. すなわち, ある種の極小型実二次体の無限族が類数1の体の無限族となることを予想する. 今年度, これを冨田(名城大学)との共著論文として, Tokyo J. Math.(2012) から出版した. この論文の結果を使って, 各周期には与えられた類数をもつ平方でない自然数は有限個に限ること(佐々木の定理(1986)の拡張)が証明できた. 河本・冨田の共著論文として投稿中である. 数値データベース拡充のために, 今年度の補助金を使ってワークステーション(HP Z620)を購入し, 名城大学に設置し, 現在稼働中である. 7億の範囲まで数値データが集まり, 各周期におけるデータが増えている. 目標とする極小型実二次体を偶数周期の場合に構成するために, 共同研究者 岸康弘(愛知教育大学)の協力を得て, 前年度「末尾急増型主要対称部分」および「pre-ELE型有限列」(「前末尾急増型主要対称部分」を改名)という新しい概念を導入し, 末尾急増型主要対称部分はpre-ELE型有限列から構成されることが解明された. 河本・岸・冨田の共著論文として投稿原稿を作成中である. 今年度は, さらに共同研究者 鈴木浩志(名古屋大学)の協力を得て, pre-ELE型有限列の構成方法を確立することができた.
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今後の研究の推進方策 |
pre-ELE型有限列のメカニズムを究明することが今後の重要な研究課題になる. 今後の推進方策として, そのためにワークステーション(HP Z620)により数値データベースの拡充を行ない, 同時に新たな数値実験を開始する予定である. 理論面の考察では, 旅費を活用し, 冨田との研究打ち合わせを密に行う予定である.
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