近年、ロボットの姿勢をどの程度自由に変えることができるかを、幾何学の手法を駆使して記述しようという試みが盛んに行われている。どのような幾何学的量がロボット運動を最も的確に記述できるかについては幾何学者達による多くの研究があるが、現在では位相的複雑さが最も有効であるということが解明されている。この量は自然数に値をとるので非常に簡潔である反面、実際に計算することは極めて困難である。 最も広く研究されているロボットは、多角形のモジュライ空間とクモの巣装置である。平成25年度はこれらを含むような、統一的ロボットの有力な候補を構成し、その性質を調べる上で有効だと思われる関数も発見した。しかしこの関数の具体的な性質を調べるところまでは到達しなかった。平成26年度の大きな成果として、この関数がボット・モース関数とよばれる非常にいい関数であることを証明できたことがある。1変数関数における極大値や極小値は、多変数関数では臨界多様体及びその指数と呼ばれるものに一般化される。多変数関数でこれらの情報を決定することは難しいが、コンピュータによる数値計算を基礎とする考察を重ね、最終的には手計算で上記関数の性質を完全に記述することに成功した。この結果を論文にまとめ、Algebraic and Geometric Topologyという国際誌に投稿したところ、査読に合格して出版された。 上記のコンピュータ計算には思わぬ副産物があった。斜辺の長さが1、底辺の長さが2xの二等辺三角形を考える。xを動かすとき、内接円の半径が最大になるxを決定せよという問題を考える。この問題の答は興味深く、xは黄金比の逆数である。この問題を1次元上げ、斜辺1の正多角錐に内接する球のうち最大なものという問題に一般化する。計算は非常に複雑になり、手計算のみでは難しい。コンピュータを駆使することにより、1次元上げた問題を解決した。
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