研究課題/領域番号 |
22540159
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
安芸 重雄 関西大学, システム理工学部, 教授 (90132696)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | クーポン集め問題 / 条件付き確率母関数 / 可換性 / 離散パターン / De Finetti の定理 / 順位付け / 尤度比検定 / 対称群 |
研究概要 |
確率変数列、確率ベクトル列、グラフィカルモデルなどの不規則な構造上に現れる離散パターンや、scanと呼ばれる複数の離散パターンの起こる回数やその待ち時間などの離散確率分布の研究とそれに基づいた統計的推測の研究を行った. とくに,一般化されたPolya urn scheme に基づいたクーポン集めの待ち時間問題を考察し,次に新しい種類のクーポンが集まるまでの時間間隔の同時分布を導出した.その際,通常のPolya urn scheme に基づくサンプリングが可換列になることに注目し,可換列に関する de Finetti の定理を使った別証明も与えた.また,その結果を用いて,各クーポンの比率を,待ち時間とクーポンが集まる順番から推定するための母数モデルを提案し,その最尤推定量の性質を調べた.さらに,クーポンが集まる順序が対称群の要素であることに注目して,クーポン集め問題に基づく対称群上の確率分布モデルを提案し,その性質を調べた.対称群上の確率分布は順位付け問題の統計的モデルになるので,順位付け問題への応用としてクーポン集め問題を捉え,順位のデータに基づいてさまざまな仮説をモデル化した.そして,その統計的仮説を検定する手段として尤度比検定の可能性を調べた.その結果,適当なサンプルサイズの下で,帰無仮説が正しいときの検定統計量の分布が十分にカイ2乗分布で近似されることや,対立仮説の下での検出力を調べ,この問題における尤度比検定の有効性を確認した. また,Polya urn scheme に基づくサンプリングから生成される可換列の場合の別証明を考察した際に,多項定理を拡張した式が副産物として得られ,Dirichlet分布のモーメントの計算に有効であることも分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今まで,確率変数列,確率ベクトル列,グラフィカルモデルなどの不規則な構造上にあらわれる離散パターンの起こる回数やその待ち時間などの厳密な離散分布について研究してきた.そして,とくに初めて無向グラフ上の問題や,クーポン集め問題からの視点で順位付け問題へのアプローチができた.このように,今までアプローチできなかったような複雑な不規則性をもつ構造上の離散パターンの厳密分布の導出に対して,条件付き確率母関数法を発展させることができたことは大きな収穫であった.さらに,今年度は理論的な論文を公表できただけでなく,具体的な計算のためのプログラムもWeb上で公開することができた. しかし一方,その結果を生かした統計的推測理論の研究については,問題が複雑になった分だけ難しくなった.推定に関してはモーメント法や最尤法などの利用が可能であることを確認し,検定に関しては尤度比検定が利用できることを確認することができた段階に留まっている.
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今後の研究の推進方策 |
条件付き確率母関数の方法が,複雑な不規則構造上の離散パターンの研究のために強力な道具となることが分かったので,今後,より複雑で現実的なモデルを研究対象に広げていきたいと考えている.そのためには,確率論や代数学などの数学の利用はもちろん,計算機で効率よく計算できるようなアルゴリズムの開発にも力を注いでいく. また,このような研究の原点であるオーダーkの離散分布論を充実させることも重要である.研究が始まった当時はあまり複雑な依存性を考える余裕がなかったが,研究がある程度進んだ状況で理論を見直してみると,さらに研究しなければならない問題が数多く残っている.また,新しい発展方向もいくつかでてきている. たとえば,可換列などの上で連やパターンの分布論的な性質を調べる問題や,新しい母数モデルの提案,また,母数モデルに関する確率的な単調性などの研究は重要になると思われるので,すぐに取りかかるべき問題である.計算の面では,今まで重要な手段であった数式処理システムの利用とともに,数値計算やシミュレーションの方法の開発にも力を入れて行きたい.
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