平成25年度の研究の主たる成果について記す。平成24年度にブラジル人の2人の共同研究者と開発した、摩擦の効果を考慮した時間2階の発展方程式の初期値問題を考え、その時間無限大における全エネルギー及びあるノルムの(ほぼ)最良な減衰率を導出する簡便な方法の更なる応用を考察した。主なアイデアは、それまでに頻繁に使われていたある種のFourier空間におけるエネルギー法(Kwashima-Shizuta-Umeda Method)とHaraux-Komornikの不等式を組み合わせる、いわゆる「改良型の周波数帯でのエネルギー法」であり、それにより極めて簡便に最良減衰率を特定することができるのである。Pointは、通常のエネルギーを空間的に局所化したとしても、その時間に関する局所エネルギーの単調性は一般には期待できないが、それを周波数帯での全エネルギーに変換し局所化すると、やはり時間についての単調性が確保されるので、より詳しい解析が可能となる、ということにある。それによって、我々の開発した方法の威力の一端を公に発表することができた。具体的には、波動方程式、回転慣性の効果を考慮した線形のプレート方程式及び弾性方程式のそれぞれに、ある種の摩擦・粘性の効果(非局所項)を考え、それぞれに対応する初期値問題の全エネルギーの(ほぼ)最良な減衰率を特定することに成功し、3本の論文として国際誌上で公表した(「雑誌論文」欄参照)。更に、現在投稿中ではあるが、それら一連の具体的な方程式を含むより広いクラスの2階線形抽象発展方程式の初期値問題に対する全エネルギーの減衰率の特定という極めて抽象的な問題にまで、我々の方法が適用されることが分かるに至った。
|