研究課題
平成23年度の研究実績は以下の通りである。(1)伝播速度が時間に依存する半線形波動方程式の大域可解性定数係数の場合には既知である半線形波動方程式の初期値問題に対する大域可解性の問題は、変数係数の場合、次のような変数係数特有の効果により、定数係数の場合と比較してはるかに困難である。A,係数の振動による線形部分におけるエネルギーの流入出B.増大する拡散係数によるエネルギーの安定化C.係数の滑らかさの影響(滑らかさの低い係数は、線形方程式の解の挙動に深刻な影響を及ぼす可能性がある)既知の研究ではAとBの影響に関する考察が主であり、Cについてはほとんど考慮されていなかった。本研究ではCの影響を考察することにより、これまでの研究では到達できなかった精密な結果を得ることができた。また、この研究で用いた手法はこの問題に限らず、変数係数双曲型方程式に対するより一般の問題に対しても適応可能であり、今後更なる応用が期待できる。(2)変数係数斉次双曲型方程式の適切性とエネルギー評価波動方程式を一般化した変数係数斉次双曲型方程式は、係数の変動やそれらの相互作用によって、波動方程式の場合には考えられなかった様々な複雑な現象を生みだす可能性がある。平成23年度は、定数係数の摂動とみなせる変数係数の非自明な条件について、係数の滑らかさとその振動の相互作用(レビ条件)という立場から精密な考察を行った。この研究成果については、現在、共同研究者とともに論文執筆予定である。
2: おおむね順調に進展している
非線形波動方程式の大域可解性の問題については当初の計画通りの目標が達成できたが、変数係数斉次双曲型方程式の適切性とエネルギー評価の問題については、一部で当初予想しなかった困難が生じた。問題となる部分については今後の課題とし、現在はその箇所を除いた範囲で研究結果をまとめている。
本研究課題で導入した手法は、今回扱った方程式に限らず、より一般の発展方程式に対する問題にも適応可能であると考えられる。今後は周辺分野の研究者と連携しながら、具体的な応用の可能性を探ってゆく予定である。
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Ann. Univ. Ferrara Sez. VII Sci. Mat.
巻: 57 ページ: 317-339
10.1007/s11565-011-0121-9
Algebraic structures in partial differential equations related to complex and Clifford analysis, 189-207, Ho Chi Ming City Univ.Educ.Press, Ho Chi Minh City, 2010
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