研究概要 |
(1)当初の研究計画に従って「漸近的に定常な点過程」の適切な定義を考えているうちに、次のような着想を得た:点過程(直線上のランダムな点配置)が「定常」であるとは、その点配置を任意のxだけずらしたものの確率分布P(x)がもとの点配置の確率分布Pに一致することである。したがって直線上の任意の確率密度関数u(x)に従ってP(x)を重ね合わせた確率分布P(u)もPと一致する。この発想に基づいて定常点過程論の3つの基本定理(Khintcine,Dobrushin,およびKorolyukの定理)に新しい証明を与えることができた。また必ずしも定常でない点過程を上記のP(u)の形の確率測度の下で考えたとき、そのPalm測度の一般形を与えることができた。証明の方針は、確率空間上の積分(平均)と実軸上の積分をFubuniの定理に従って順序交換することにより自然に見出される。また点配置が乗っている空間を実軸からn次元ユークリッド空間へ、さらには局所コンパクトな位相群へ一般化することも可能であることがわかった。 (2)連携研究者上木直昌氏と共同で、研究集会「ランダム作用素のスペクトルと関連する話題」を開催した(2011年12月1-3日、京都大学人間・環境学研究科棟)。数学サイドからは確率論およびスペクトル理論の研究者が、物理サイドからは統計物理および凝縮系物理の研究者の参加を得て、活発な討議が行われた。 (3)2009年に、本研究の課題に密接に関連するテーマで、京都大学数理解析研究所にて開催した研究集会の報告集を編集し、講究録別冊第27巻として刊行した。(書名はSpectra of random operators and related topics.)
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