前年度終了時に、RIMS研究集会で発表した結果をさらに強くできることが判明していた。そこで当該年度ではまずその部分を証明し論文としてまとめることに前半を費やした。8月に韓国において"Dynamical Systems and Related Topics"が開催されたので、その成果を"A refinement of Mane's C1 generic dichotomy"のタイトルで発表した。論文もその時期に投稿した。 当該研究では、後半にラグランジュ系の生成的性質を研究する予定であったが、前半のPalis予想の研究が遅れたことと、副産物としての可観測沈点の研究が発生したため、さらにこの方向を進めることなった。この可観測沈点は吸引的周期軌道を数値計算的視点からの可観測性に基づいて定義したもので、結果は2次元のC1微分同相写像における非双曲性の領域に無限個の可観測沈点が存在するか、そうでなければ対照的に周期経過後の微分が指数的に増大する方向と縮小する方向を同時に持つという極めて観測しにくい沈点が無限個存在するというものである。カオス的現象において周期点を数値計算により追跡しようという試みが多くなされている中、確率的な可観測性からの完全な可観測性はどのような状況で可能なのかという問題も提起しているため、応用への意義もあると思われる。
後半では、上の研究で得た技術をC2の部分双曲性を持つ領域において適用し中心多様体において比較的大きな吸引領域を持つような周期軌道をC1摂動でつくることを考えた。これはC1摂動後の異次元ヘテロクリニック・サイクルの存在につながるためPalis予想解決への重要なステップである。このC2級微分同相写像のC1摂動によるClosing Lemma はC2級由来の性質をある程度保存しながら良い周期軌道をつくるものであり、一部を論文にまとめて投稿した。
|