「平衡点渦系の平均場は点渦系の何を表現し得るのか」、これを明らかにすることを目標に、平衡点渦系の平均場の空間的構造、並びに、平均場を与える自由エネルギー汎関数の無限次元空間におけるグラフの構造の解析、特に、これらの構造を、有限次元系である点渦系のハミルトニアンと関連づけて解明することが、本研究の目的である。 昨年度までに、平均場方程式を簡略化したゲルファント問題において、不安定な線形化固有値の漸近挙動の詳細が明確になった。これにより、ゲルファント問題では、汎関数の変分構造と点渦系のハミルトニアンの幾何学的な構造の間の「違い」があることを認識した。今年度は、この、当初の想像超えて詳細に解明できた挙動を考察し、これまでの研究を総括することが計画であった。 今年度は、課題に深く関連する話題として、4次元領域における重調和作用素に関するゲルファント問題の「弱い」漸近的非退化性に関して、論文を出版した。ここでは、2次元での精密な計算方法の一部を応用することで結論を得たが、高次元であることに由来する現象により、未だ完全な漸近的非退化性には至っていない。現在も、2次元での議論の構造を明確にして、漸近的非退化性を得ることを進めている。漸近的非退化性の証明は、線形化作用素の固有値計算の特別な場合に該当し、この方面での研究の更なる展開の可能性を、本研究課題を遂行することで得ることができた。これにより、新たな研究課題を設定し、科学研究費の新規の申請を行った。 また、今年度は最終年度でもあり、これまでに得られた成果を、様々な形で公表することを進めた。具体的には、国内外で講演し(京都大学数理解析研究所、Tamkang大学(台湾)など)、必ずしも数学の学術誌ではない流体力学の雑誌においても、新たな知見も含めた概説論文を公表した。これらを通して、有益な議論を多数行うことができた。
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