研究概要 |
本年度は,超流動液体ヘリウム中の素励起であるロトンを,レーザー非線型分光法の一種であるCARS法によって生成・観測して研究する目的のために特化したガラスクライオスタットの設計・製作を行った。この測定でロトンを生成・観測する場合,入力レーザー光とCARS出力光のエネルギーの差はせいぜい12cm^<-1>程度であるため,実験的に最も大きな問題となるのは,入力光と出力光の分離である。したがって,クライオスタットのガラス壁を光が通り抜けるときに生ずる散乱光を極力減らすことが最も重要である。このことから,通常は封じ切りであるクライオスタットのガラス壁のうち,光が通る部分を,取りはずし可能なガラス窓板とし,そのガラス窓板の両面を完壁に清浄化できるようにした。また,CARSでは,入力レーザー光が液体ヘリウム中で焦点を結ぶようにレンズで絞り,その焦点に於いて3本の入力レーザー光を空間的に完全に一致させる必要がある。このため,クライオスタット中に,軸周りに回転可能な棒を導入して,その先に色ガラス板の小片を取り付け,その小片に当たるレーザー光を観測することによって,焦点におけるレーザー光の空間的一致を調整できるようにした。
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