4H-SiC(0001)面(Si 面)を基板に用いて形成したトレンチゲートMOS-FET では、側壁に相当する(11-20)面(A 面)のチャンネル移動度が、Si 面に比べ非常に高い事が知られている。そこで、A 面で高いチャネル移動度が得られる理由を調べるため、アモルファスSiO_2(a-SiO_2)/4H-SiC (11-20)原子構造モデルを加熱・急冷法を用いた計算機シミュレーションで生成し、Si 面上の界面での原子・電子構造の解析結果と比較した。得られたA 面モデルについて電子構造を解析した所、Si 面モデルではバンドギャップ中に現れていた界面Si に起因する欠陥準位の幾つかが、 A 面モデルでは生成されない事が分かった。特に、SiC 層中のSi を源とし、結合長の伸展した Si-C 結合に起因する欠陥は、Si 面では伝導帯下端付近に準位エネルギーを持つため、チャネル移動度を大きく低下させる原因となるが、A 面ではSi-C 結合はSiC 界面にあるため歪が緩和され、欠陥準位が顕在化しないことが分かった。チャネル移動度を大きく低下させる欠陥準位が顕在化しない事が、A 面において高い移動度が実現される原因である可能性が示唆された。
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