研究課題/領域番号 |
22570192
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
太田 安隆 北里大学, 理学部, 教授 (90192517)
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研究分担者 |
斎藤 康二 北里大学, 理学部, 助教 (70556901)
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キーワード | 細胞運動 / 細胞接着 / small GTPase / 細胞骨格 / 間葉性遊走 / Rho / Rac |
研究概要 |
平成23年度には、Blebを介したアメーバ様遊走におけるFilGAPの機能を明らかにすることを目標に研究を行い,以下の成果を得ることができた。 1 3Dでのアメーバ様運動におけるFilGAPの機能解析 ヒト乳がん細胞MDA-MB-231は、3次元培養条件下(3D)でBleb型と間葉型の形態を混在して持っているが,FilGAPの発現をRNAiで欠失させると大部分の細胞が間葉型に変化する。Time-lapse顕微鏡で細胞の動的挙動を観察したところ、FilGAPを欠失した細胞は一度間葉型の形態になるとアメーバ型の形態に戻ることができなくなることがわかった。また、浸潤アッセイで3Dでの運動能を測定したところFilGAPを欠失した細胞は浸潤能が低下することがわかった。以上からFilGAPは3DでBleb型の運動に必要な因子であり、細胞はFilGAP存在下でより高度の浸潤能を示すことが明らかになった。 2 3Dでのアメーバ様運動におけるFilGAPの制御機構 FilGAPはRhoの標的タンパク質であるROCKによりリン酸化されることで活性化される。このシグナル伝達系が3DでのBelb構造の形成に関与しているか検討した。活性化型RhoおよびROCKをMDA-MB-231細胞で過剰発現させると、細胞はBleb構造を形成する。FilGAPの発現をRNAiで欠失させると細胞は葉状仮足を伸展させ、アメーバ型の形態をとらなくなった。また、FilGAPのROCKによるリン酸化部位をアラニンに変異させた非リン酸化型FilGAP変異体はBleb構造を形成しないが、アスパラギン酸に変異させた疑似リン酸化型FilGAP変異体はROCK特異的阻害剤存在下でもBleb構造を形成することがわかった。以上からFilGAPはRho/ROCKシグナル伝達系で3DでのBleb構造の形成に関与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に掲げた3つのテーマの内、1)Blebを介したアメーバ型細胞運動におけるFilGAPの機能解析については、ヒト乳がん細胞でのBeleb形成におけるFilGAPの重要性を確立し、その知見を分子生物学会で発表した。また、現在論文を投稿中である。2)Bleb形成におけるFilGAP結合タンパク質Arf6の機能についても研究を進めており、活性化型Arf6はFilGAPと特異的に結合し,FilGAPによるBleb形成を促進させる知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、FilGAP結合タンパク質であるArf6のBleb構造形成における機能解析を進め、学会や論文で発表する。今後,Arf6のRNAiによるKDの効果などを検討しArf6のBleb形成における機能を確立したい。また、がん細胞の間葉-アメーバ様移行(MAT)におけるFilGAPの機能解析は、ヒト乳がん細胞で得た知見を他のがん細胞でも検討し、FilGAPのMATにおける重要性を一般化して行く予定である。
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