研究概要 |
平成24年度には、がん細胞のBlebを介したアメーバ様遊走におけるFilGAPの機能を明らかにすることを目標に研究を行い,以下の成果を得ることができた。 1 様々な上皮由来がん細胞におけるFilGAPの機能解析 平成23年度までにヒト乳がん細胞MDA-MB-231を用いて得られたFilGAPのアメーバ様遊走における重要性が、他のがん細胞でも当てはまるかどうか、様々なヒト由来上皮がん細胞を用いて解析した。ヒト上皮がん細胞株として、肺がん(A549), 前立腺がん(PC-3), 結腸線がん(SW620)細胞を用いて、FilGAPファミリー分子(FilGAP, ARHGAP22, ARHGAP25)の発現をRNAiで抑制したところ、FilGAPの発現を欠失させたときのみ細胞が間葉型に変化した。これからFilGAPは上皮がん細胞のBleb型の運動に必要な因子であることが示唆された。 2 アメーバ様運動におけるFilGAPの制御機構と浸潤への関与 平成24年度には、FilGAPの細胞内でのリン酸化状態が、細胞形態の変化に対応しているか検討した。MDA細胞をコラーゲンゲル上で培養し,Rhoを活性化させるリゾホスファチジン酸(LPA)を添加すると細胞は、一過性にBlebを形成し、アメーバ様構造をとる。このとき細胞内FilGAPのリン酸化が形態変化に伴って変動することを確認した。また、浸潤アッセイで浸潤した細胞の形態を解析したところ、正常細胞では間葉型とアメーバ型が混在しているが、FilGAPを欠失した細胞は、アメーバ型の細胞が減少していた。以上の結果から、FilGAPはアメーバ型の形態へと変化させることによって、がん細胞の浸潤・転移に関与していることが示唆された。
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