年齢査定のために保存されている鱗の安定同位体を分析することにより、海洋生活期の生活履歴の評価を試み、岩手産シロザケの回帰率減少要因を検討した。筋肉と鱗縁辺部の炭素窒素安定同位体比に正の相関が見られたことから、鱗には海洋生活年ごとに餌の履歴をとどめている可能性が示唆された。岩手と北海道に回帰したシロザケで個体間のばらつきが大きく集団間、海洋生活年間で炭素・窒素安定同位体比に有意な差は見られなかったが、両集団で炭素窒素安定同位体比の低下が共通して海洋生活 2 年目に起こっていた。このことから生活史の比較的早い時期に餌の質が悪い環境を経験する可能性があるものと推察された。
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