研究課題/領域番号 |
22590191
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
早坂 晴子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70379246)
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キーワード | 転写因子 / 細胞分化 / 血管内皮細胞 / リンパ球 |
研究概要 |
高内皮細静脈(high endothelial venule : HEV)はリンパ節とバイエル板にのみ存在し、血管系からのリンパ球トラフィッキングを媒介する特殊な血管である。HEV内皮細胞は背が高く大きな細胞質を持ち、リンパ球トラフィキングに関与するケモカインや接着分子を選択的に発現するという特徴をもつが、その発生分化機構については不明な点が多い。私は新生仔期マウス腸間膜リンパ節HEV内皮細胞のマイクロアレイ・定量的PCR解析からHEV内皮細胞に発現する転写因子を見出した。この転写因子はHEVの分化、成熟が進む胎生17.5日頃から新生仔期においてHEV内皮細胞に選択的に発現するが、生後一日目には急速に発現が消失し、成体リンパ節では発現が検出されないことが明らかとなった。また、HEVにおける遺伝子発現は、新生仔末梢リンパ節およびパイエル板の一部でも観察されたが、HEVの存在しない脾臓では検出されなかった。この結果を踏まえて今年度は、リンパ節におけるHEV形成におけるこの転写因子の重要性を検討した。この転写因子のノックアウトマウスは生後24時間以内に死亡するため、胎生期から生後1日目までのリンパ節について解析を行ったところ、形態的にHEVとみられる血管構造は観察されたものの、野生型と比較してHEVに選択的に発現する接着分子MAdCAM-1、L-selectinリガンドの発現低下傾向が見られた。さらに脾臓に異所的にHEV様血管が形成される転写因子Nkx2.3ノックアウトマウスの脾臓において、この転写因子の発現が検出された。野生型マウス脾臓ではこの転写因子の発現がみられないことから、この転写因子はNkx2.3の下流で発現し、HEV形成と相関する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
候補遺伝子のノックアウトマウスの解析は順調にすすんでおり、当初計画していなかった異所的にHEV形成がおこる変異マウスの解析まで進めることができた。一方、本年度の計画として候補遺伝子のトランスジェニックマウス作成は実験動物施設の時間とスペースの関係上完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
候補遺伝子のトランスジェニックマウスの作成および、血管特異的遺伝子ノックアウトマウスの作成を試みる。すでに血管特異的遺伝子ノックアウトを行うため、deleterマウスとしてTie2-Creマウスを導入済みである。
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