正常ヒト各臓器の組織アレイやヒト各種癌組織の組織アレイに対し、50種類以上のレクチンによる染色性をペルオキシダーゼ法により光顕レベルで網羅的に検討した。いくつかの癌組織において、正常組織とは異なる染色パターンを示すレクチンの組み合わせが確認された。また正常組織でも、臓器ごとに異なるレクチン染色パターンが実質細胞のみならず血管内皮細胞でも確認された。用いるレクチンの組み合わせを変えることにより、特定の癌組織の同定や診断、あるいは臓器マーカーとしての糖鎖発現の微妙な違いや、血管内皮細胞表面糖鎖の臓器ごとの差異などの解析が効率的に行える可能性が確認できた。また疾患モデルを用いた実験として、糖尿病発症GKラットの腎臓における糖脂質の局在を、各種糖脂質特異的モノクローナル抗体を用いて正常ラット腎臓と比較した。光顕的にはCy3標識により共焦点レーザー顕微鏡にて、電顕的にはHRP標識による包埋前染色法にて観察した。正常ラットでは、糸球体の足細胞の特に基底膜に面する足突起細胞膜に、抗Gb3グロボシド抗体陽性反応が認められた。一方GKラットにおいては、足突起細胞膜のみならず内皮細胞細胞膜、糸球体基底膜に抗Gb3陽性域が拡大した。一方、抗GD1a など各種ガングリオシド特異抗体は、糸球体基底膜にも内皮細胞にも反応は認められず、足細胞の細胞内膜系の陽性反応が特にGKラットにおいて認められた。糖脂質の局在は、糸球体における濾過機能を解明するうえで有用な手がかりになると考えられた。
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