研究課題/領域番号 |
22590890
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 温美 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60570356)
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研究分担者 |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00379166)
高畠 義嗣 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30403075)
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キーワード | オートファジー / 近位尿細管 / 虚血再還流傷害 / p62 / LC3 / 細胞内封入体 |
研究概要 |
オートファジーは細胞内分解システムのひとつであり、細胞構成成分の代謝回転を担うことにより細胞の生存に必須の役割を果たす。本研究ではまずKAP-CreマウスとAtg5 floxマウスを交配することにより近位尿細管特異的オートファジー不全マウスを作成・解析し、尿細管におけるオートファジーの役割を検討した。ノックアウトマウスはメンデルの法則に基づき出生し、弱齢では目立った異常は認めなかったが、8週令以降軽度の腎腫大を、6か月令で軽度の尿糖とアミノ酸尿を認めた。9か月令までの観察では腎機能、生存率の差はなかった。組織学的検索では、ノックアウトマウスの近位尿細管細胞の細胞質においてPAS弱陽性の均質な沈着物およびユビキチン陽性・P62陽性の細胞内封入体を認め、また電子顕微鏡レベルで異常な形態のミトコンドリアの集積を認めた。以上より、基底レベルのオートファジーは尿細管のホメオスタシスの維持を担うことが判明した。次に急性腎傷害におけるオートファジーの役割を虚血・再灌流(I/R)障害をモデルに検討した。まず、LC3-GFPトランスジェニックマウスにI/R障害を与えたところ、LC3 dotが近位尿細管において多数形成された。このことから、I/R障害により近位尿細管においてオートファジーが亢進することが判明した。次に、近位尿細管特異的オートファジー不全マウスおよび野生型マウスにI/R障害を与え、尿細管細胞の障害の程度を組織学的に比較したところ、オートファジー不全マウスでは野生型マウスに比較して、I/R障害後の腎障害が増悪した。オートファジー不全マウスの尿細管細胞の細胞質にはユビキチンおよびp62陽性の封入体が蓄積した。このことから、オートファジーは、尿細管障害において、I/R障害に対抗して細胞保護的に働くことが判明した。
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