研究課題/領域番号 |
22590890
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 温美 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60570356)
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研究分担者 |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00379166)
高畠 義嗣 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30403075)
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キーワード | オートファジー / シスプラチン腎症 / 近位尿細管 / ミトコンドリア |
研究概要 |
研究成果オートファジーは、蛋白質やオルガネラの分解・処理により細胞内恒常性を維持するが、シスプラチン(以下、Cis)腎症でのオートファジーの役割に関する報告は少ない。研究代表者らは近位尿細管特異的オートファジー不全マウス(Atg5F/F;KAP-cre、以下、KOマウス)を用いて、Cis腎症でのオートファジーの役割を検討した。具体的には8週齢のKOおよび野生型マウスにCis(15mg/kg)を腹腔内投与し、3日後に腎機能・組織傷害などを評価した。また、KOおよび野生型マウス由来の近位尿細管細胞(Atg5(-)PTECおよびAtg5(+)PTEC)をCis(50μM)存在下で培養し、ミトコンドリアでのROS産生量をMitoSOXRedによって評価した。その結果KOマウスでは、Cis投与により腎機能および組織傷害が有意に増悪し、DNA損傷(γ-H2AXで評価)、p53活性化、アポトーシス、p62/ユビキチン陽性の蛋白凝集体が有意に増加した。また、Atg5(-)PTECではAtg5(+)PTECと比べて、Cis存在下でミトコンドリア由来ROS産生量が有意に増加し、生存率も低下した。これらのことからオートファジーはDNA損傷、異常蛋白の蓄積、ミトコンドリアにおけるROS産生などの抑制により、Cis腎症において防御的に機能すると考えられた。意義・重要性これらの成果はこれまで結論が一定していなかったオートファジーのシスプラチン腎症における保護効果の有無を厳密に検証した点で画期的であると考える。また将来薬剤によりオートファジーを亢進させ、腎障害を軽減するという臨床応用に道を開くものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の仮説通りの結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジーはシスプラチン腎症においていかなるメカニズムで尿細管細胞を守っているのかを解明したい。また腎臓の別の疾患モデルでもオートファジーが保護的に働いているのか検証したい。
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