研究課題
基盤研究(C)
アルツハイマー病(AD)は最も高頻度の老年期認知症であるが、現在の市販薬の認知機能改善効果は限定的で、記憶改善や神経細胞変性を抑止する新規治療薬の開発が進められている。我々は、早期より神経細胞内に蓄積するアミロイドβ42 (Aβ42)を治療標的とする新規AD治療薬候補としてアポモルフィン(APO)を同定した。本研究課題では、培養細胞、ADモデルマウス(3xTg-AD)、AD患者剖検脳を用いて、1) 早期より神経細胞内に蓄積するAβ42は毒性ターン構造Aβ42オリゴマーが主体であること、2) 毒性ターン構造Aβ42オリゴマーの蓄積は小胞体ストレスと関連が深いこと、3) APO治療は毒性ターン構造Aβ42の分解を促進すること、4) ADモデルマウスに対するAPO治療はタウ蛋白の過剰リン酸化を抑制するリチウムよりも記憶改善効果が高いこと、5) 現在抗パーキンソン薬として市販されているアポカイン(R)も少量注射でADモデルマウスの記憶力改善に有効であること6) APOのAD治療効果は単純なドパミン受容体刺激効果とは別であること、7) APOは細胞内インスリン分解酵素(IDE)活性を上昇させること、8) APOの分子作用機序の一つとしてインスリン抵抗性の抑制があり、それがIDE活性上昇につながる可能性、などをあきらかにした今後は、ADモデルマウスの脳のインスリン抵抗性上昇とそれに対するAPO治療の抑制効果を検討し、脳の糖尿病としてのADに対する新規治療薬剤の開発を目指していく。
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