Legionella pneumophilaの病原性は,食細胞での増殖性と関連があるとされている.これまでに,ヒトNAIPがL. pneumophilaの細胞内増殖を抑制することを示し,L. pneumophila感染に対するNAIP遺伝子産物の防御的な役割を明らかにしてきた. 本研究では,NAIPによる細胞死の制御機構について検討した.DNA傷害で誘導される細胞死は,ヒトNAIPの発現によって抑制されるが,このときカスパーゼ3およびカスパーゼ7の活性化が阻害されていた.このことから,ヒトNAIPは,カスパーゼ3/7の活性化を抑制することにより,DNA傷害で誘導されるapoptosisを阻害することがわかった. また,L. pneumophila感染の際には,ヒトNAIPと菌のフラジェリンにより細胞死が誘導されるが,このときIL-1βが分泌されていた.IL-1 βの分泌はカスパーゼ1阻害剤によって抑制されたが,カスパーゼ3/7阻害剤では抑制されなかった.さらに,フラジェリンを欠損した変異株を感染させた場合では,IL-1 βの分泌が認められなかった.このことから,L. pneumophila感染の際には,NAIPがフラジェリン依存的にpyroptosisを誘導することが明らかになった. 以上の結果から,ヒトNAIPは,細胞内に生じたストレスの種類に応じてapoptosisを抑制,またはpyroptosisを誘導することにより,細胞死を制御していることが示唆された.
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