研究概要 |
癌幹細胞の由来およびその特徴的なフェノタイプの背景となる分子生物学的異常はいまだ明らかにされていない。通常の幹細胞(stem cell)では、分化・生死に関連した遺伝子群の発現はエピジェネティックな制御で行われており、癌幹細胞ではこのエピジェネティックな遺伝子発現制御機構に何らかの異常が起こっている可能性が極めて高く、本研究は膵癌幹細胞におけるエピジェネティックな異常をゲノム網羅的に解析し、発癌、癌進展、薬剤耐性および予後など臨床病理学的因子との関係を明らかにし、得られた知見を臨床に応用することである。膵癌幹細胞はCD133の表面抗原を有する細胞である可能性が高く,当研究室においてソーティングを行いその間質相互作用に関して報告した。本年度は更なる表面抗原を同定すべく、rtPCRやフローサイトメトリー,Auto-MACSなどを用いCD10,CD29,CD34,CD44,CD54,CD105,CD117,CD271,Stro-1,c-Met,MSCA-1などの間葉細胞や内皮性幹細胞マーカーを用いて当研究室所有の癌細胞株での発現状況の解析をすすめた。細胞株ごとに発現状況は大きく異なっており、現在はCD105などの抗原を指標とし分取を行った。特定の抗原の陽性/陰牲によって膵星細胞との相互作用に差があることが認められた。次年度は更なる種種の抗原を用いての細胞の性質の違いを検討し、より膵臓癌幹細胞のマーカーの同定を目指す。その上で、マーカーを用いて純化した膵癌幹細胞集団におけるDNAメチレーションの異常を、マイクロアレイを用いた包括的アプローチにて解析することを目標とする。
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