研究概要 |
中性子捕捉療法に用いられるBSHは、申請者らの報告により細胞内グルタチオン合成阻害剤であるBSOを併用することにより取り込みが増強されることが明らかになっている(Yoshida et al, Cancer Lett. 215 (2004) 61-67, Yoshida et al, Cancer Lett. 263 (2008) 253-258)。 本研究ではそのメカニズムに迫るため、ラット脳腫瘍モデルを作成した。フィッシャー344ラットに9L細胞 1X10e5cellsを脳内投与し、同時に右下肢に2X10e6cells 皮下投与した。投与後10-14日後、皮下腫瘍径が10mmになったところでBSO, BSHを投与して実験を行った。 先行研究ではBSOとBSHを同時投与していたが、本研究で、BSOを6時間前にプレロードし、組織内グルタチオン濃度を十分下げておくことによりBSH取り込みがより増強され、しかもその効果が24時間以上持続することが明らかになった。BSHと類似の構造を持つがSH基を持たない他のホウ素化合物ではBSOの効果はまったく見られないことから、この効果は、BSHのSH化合物としての性質によるものと考えられる。N-acetylcystein(NAC)を用いた実験では NAC単独投与ではまったく効果がなく、BSOと併用した群でさらに取り込みが増強される傾向があった。 BSOを6時間前にプレロードすることにより、BSH取り込みは数倍から20倍増強されることが明らかになった。照射時間の短縮、薬剤投与料の縮小などに役立つことが考えられる。
|