研究概要 |
脊髄損傷後神経新生の機序解明は,脊髄損傷後の再生医療の開発を飛躍させ得る.脂肪酸結合蛋白(FABP)は,脳虚血後の神経細胞の保護や新生に関与すると考えられているが,脊髄損傷後の神経新生ならびに機能回復における役割について詳細に検討されていない.そこで,本研究では,クリップ閉鎖による脊髄損傷モデルを用い,これらを検討することを目的とする。 平成24年度は、昨年作成した脊髄損傷モデルマウスから採取した脊髄組織を用いて、下記の実験を行った。 1、分子生物学的解析:sham、損傷後3, 7, 10, 14, 28日目の各ポイント(n=4)で、野生型の脊髄損傷マウスを灌流固定し、損傷部位の脊髄を摘出した。Western blotにより損傷部位における脳型及び上皮型FABPの発現を解析した。結果、脳型FABPは脊髄損傷後14日目に有意に発現が亢進し、上皮型FABPは10日目に有意に発現が亢進した。 2、多重免疫染色:脊髄損傷後2-4日目に、5-bromo-2-deoxyuridine-monophosphate (BrdU)を腹腔内投与し、脊髄損傷後4、7、14、21、28日目の各ポイントで、野生型、脳型FABP及び上皮型FABPノックアウトマウスの3系統の脊髄損傷マウスを灌流固定し、損傷部位の脊髄を採取し薄切切片を作成した。結果、3系統ともに、BrdUと幼弱神経細胞(doublecortin)および成熟神経細胞(NeuN)と共陽性を示す細胞はごく少数認められたのみで、3系統に差は認められなかった。また、FABPとアストロサイト(GFAP)とNeuNをそれぞれ多重免疫染色した結果、脳型、上皮型ともにGFAPと共陽性を呈したが、NeuNとは上皮型FABPが一部共陽性を呈したものの、FANP7は共陽性を呈しなかった。
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