研究概要 |
【目的】ラット正常軟骨細胞培養系を用いて、軟骨細胞に生じる酸化ストレス、カルボニルストレス、小胞体ストレスの関連性を検証し、これら3つのストレスの強度と相互作用が軟骨細胞機能とアポトーシスに及ぼす影響を検討した。 【方法】5週令SDratの膝関節より採取した軟骨細胞培養系において、カルボニルストレスをGlycolaldehyde (GA;0,100,500,1000μM)、酸化ストレスをLipopolysaccharide (LPS ; 0, 0.1, 1, 5μg/ml)、小胞体ストレスをTunicamycin (TM ; 0, 1, 5, 10μg/ml)で刺激誘導した。24時間後に培養液と軟骨細胞を回収し、軟骨細胞のcell lysateからRNAを抽出した。カルボニルストレスはDNPH、酸化ストレスはDCFH-DAをELISAで評価し、小胞体ストレスはXBP-1とCHOPの発現をRT-PCRで解析した。また、アグリカンとII型コラーゲンの発現をRealTime-PCRで、アポトーシスをELISAで定量化した。 【結果】LPSとTM刺激により、酸化ストレスと小胞体ストレスがそれぞれ濃度依存的に上昇した。GA刺激ではカルボニルストレスだけでなく、酸化ストレスや小胞体ストレスも濃度依存的に誘導され、GA 500μMはLPS 1μg/ml、TM 5μg/mlの刺激と同等だった。これらの刺激で、アグリカン発現はそれぞれ95%、69%、70%、II型コラーゲン発現は85%、85%、62%抑制された。アポトーシスの誘導はGAとLPS刺激は同等で、TM刺激の1.7倍強かった。 【考察】3つのストレスを惹起すると、それぞれが軟骨細胞の機能低下とアポトーシスを誘導するが、GAによるカルボニルストレス誘導は酸化ストレスと小胞体ストレスも同時に発生し、より重篤な細胞障害をきたすことで軟骨変性に関与することが示唆された。
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