研究概要 |
【目的】酸化ストレス、カルボニルストレス、小胞体ストレスはそれぞれが軟骨細胞障害性を有するが、互いの関連性については不明な点が多い。平成22年度は、各ストレスの刺激剤を用いて、軟骨細胞代謝とアポトーシスに及ぼす影響を評価した。平成23年度は、各ストレスの抑制により、それぞれのストレスの相互作用をより詳細に検討した。 【方法】ラット軟骨細胞培養系において、酸化ストレスをLipopolysaccharide (LPS, 1μg/ml)、カルボニルストレスをGlycolaldehyde (GA, 500μM)、小胞体ストレスをTunicamycin (TM, 1μg/ml)で刺激誘導した。さらに抗酸化剤としてN-acetylcysteine (NAC, 1mM)、カルボニルストレス抑制剤としてAminoguanidine (AG, 1mM)、小胞体ストレス抑制剤として4-phenylbutyricacid (PBA, 3mM)をそれぞれ併用投与し、24時間後に培養液と細胞溶解物を採取した。酸化ストレスはDCFH-DA、カルボニルストレスはDNPHをELISAで、小胞体ストレスはXBP-1、GRP78およびChopの発現をqPCRで解析した。また、II型コラーゲンとアグリカンの発現をqPCR、アポトーシスをELISAで評価した。 【結果】LPS、GA、TMにより、酸化ストレス、カルボニルストレス、小胞体ストレスがそれぞれ上昇し、抑制剤NAC、AG、PBAにより各ストレスはそれぞれ45%、47%、50%に抑制された。LPSはカルボニルストレスも誘発し、NACとAGが抑制効果(43%、73%)を示した。GAは他二つのストレスも誘発したが、酸化ストレスのみNACとAGにより抑制(51%、58%)された。LPS、GA、TM刺激によるII型コラーゲンとアグリカンの発現低下およびアポトーシスの増加は、それぞれ対応する抑制剤によって抑制された。 【考察】酸化ストレスとカルボニルストレスは、各々の発生と反応経路において互いに関連して軟骨細胞の機能低下とアポトーシスを誘導することが示された。また、カルボニルストレスによりAGEsが産生されるが、近年AGEsと小胞体ストレスの関連性が示唆されており、上記の結果はその知見を支持するものである。
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