【目的】軟骨変性における酸化ストレス、カルボニルストレス、小胞体ストレスの関連性を明らかにするために、平成22~23年度は各ストレスの刺激剤と抑制剤を用いて、軟骨細胞培養系における軟骨細胞代謝とアポトーシスに及ぼす影響を評価した。平成24年度は、生体膝における各ストレスの軟骨変性へ及ぼす影響を検討した。 【方法】5週齢雄Wistar ratの右膝関節内に、酸化ストレス刺激剤としてLipopolysaccharide(LPS,10μg)、カルボニルストレス刺激剤としてGlycolaldehyde(GA,1M)、小胞体ストレス刺激剤としてTunicamycin(TM,5μg)をそれぞれ注入した。1週後と4週後に膝関節を摘出して、PFA固定、脱灰後にパラフィン標本を作製した。PBS(40μl)を関節内注入した群と前十字靱帯切離による変形性膝関節症(OA)モデル群を対象として別に準備した。パラフィン標本から薄切切片を作成し、酸化ストレス、カルボニルストレス、小胞体ストレスを、それぞれ抗8-OHdG抗体、抗AGEs抗体、抗XBP-1抗体を用いた免疫染色により評価した。また軟骨変性度をサフラニンO染色、アポトーシスをTUNEL染色によりそれぞれ評価した。 【結果】薬剤投与1週後に、LPS群、GA群、TM群の8-OHdG、AGEs、XBP-1陽性細胞数がそれぞれ上昇した。しかし4週後にはそれらの上昇はなくなりPBS群との差はなかった。1週後の軟骨変性度は各群間で差がなかったが、4週後にはGA群が有意に上昇した。4週後のTUNEL染色はLPS群とTM群でOA群と同等の上昇を示した。 【考察】生体内で発生した酸化ストレス、カルボニルストレス、小胞体ストレスは、それぞれが軟骨変性を誘導したが、互いの関連性については明らかな傾向は確認できず、さらなる検討が必要である。
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