本研究では、疼痛及びその鎮痛が記憶・学習に与える影響を明らかにする目的で、ラット単純開腹モデルを用いて、一試行受動的回避学習試験(inhibitory avoidance test: IA)を用いた恐怖刺激記憶に術後急性疼痛が及ぼす影響を検討した。開腹術2時間後にIA試験のコンディショニング、24時間後にテストを施行したところ、予想に反して両群で恐怖刺激記憶の程度は変化していなかった。また、海馬における記憶学習に関与していることが知られているAMPA受容体のGluA1 subunitの、術後24時間後のシナプトソームでの量を両群で比較したところ、差がないことが明らかになった。本研究の結果、術後早期の急性疼痛は、周術期の記憶学習障害に直接影響しない可能性が示唆された。
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