賃金制度に関する主要文献、日本における病院調査の結果、英国における賃金制度Afc(NHS Agenda for Change)を踏まえ、日本における合理的賃金制度モデルの試案を作成し、これについて労働組合関係者や看護職者にインタビューを行い修正を行った。 賃金制度モデル作成の前提として、賃金体系の透明化と整合性の必要性、看護管理者の関与の必要性が示唆された。また賃金の公民格差の存在は、看護職者の確保定着にも影響するため、まずは民間賃金に影響力の強い公務員賃金の改革が必要であることが英国調査結果から示唆された。 わが国の賃金制度の現状に則して、現時点で改善可能な合理的制度案としては、年功部分を残しながら、一部に能力給を取り入れた体制であると考えられた。能力評価において現状のクリニカルラダーを評価に導入するためには、現在多く用いられているラダーでは区分が租すぎることが問題になる。これについては英国のAfcの各段階が参考になる。また現状のラダーは潜在能力評価に偏っているため、これをコンピテンシー評価に移行させることが不可欠であるが、コンピテンシー評価尺度の合理性はまだ検討途上であることが課題として残された。 さらに、年功部分・能力給部分のいずれについても、実額を決定する際には、少なくとも同種の医療施設内での、他職種も合わせた全体における相対評価において定められる必要があることが明らかになった。 なお、能力給決定においては、評価基準だけではなく毎年の評価者の育成が急務であることも明らかになった。賃金制度における成果給の導入については、現状の目標管理制度の評価への導入について検討したが、このことは目標管理本来の目的から逸脱するため不適切である。また、それ以外の手法があったとしても、チームワークを基盤とする看護職者には成果給導入は適切ではないと結論づけた。
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