本研究は、術後せん妄を発症した患者の家族の身体的心理的状態についてミックス法を用いて把握し、看護介入の検討を行うことである。 対象者は術後せん妄を発症した患者の家族である。術後せん妄発症リスクのある患者を登録し、手術前、術後せん妄発症時、せん妄消失後を調査日とした。家族の身体的心理的状態を明らかにするために、唾液アミラーゼ活性、POMS気分プロフィール尺度、主観的健康観、共感的コーピング尺度を用いた。患者のせん妄の評価は、術後5日間日本語版NEECHAM混乱錯乱スケールを用いた。また、せん妄消失後には家族に対して、術後せん妄発症時のせん妄の捉え方に関する半構造化面接を行った。分析は、量的データでは3時点間の比較を行い、質的データでは内容分析を行った。 研究協力の同意が得られた家族113名のうち、患者が術後せん妄を発症した家族25名を分析対象とした。家族の唾液アミラーゼ活性は、3時点間で有意差があり、術後せん妄発症時が手術前とせん妄消失後より有意に高かった。また、POMSは「緊張-不安」と「怒り-敵意」において3時点間で有意差があり、「緊張-不安」で手術前と術後せん妄発症時がせん妄消失後より有意に高かった。主観的健康観と共感的コーピング尺度は、3時点間で変化はみられなかった。半構造化面接の内容分析より、術後せん妄発症時の家族のせん妄の捉え方として「いつもと違う」、「先が見えない」、「助けたい」、「通用しない」、「患者の変化の裏付け」、「迷惑をかける」、「限界の予感」、「医療者との解釈の相違」の8つのカテゴリーが抽出された。 家族は、患者の術後せん妄発症により手術前から引き続き更にストレスを感じており、それは、家族のせん妄に対するネガティブな捉え方が関連していると考えられた。家族に対して患者の状態に関する情報提供とともに術前から術後せん妄の理解を得ることの必要性が示唆された。
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