研究課題
神経系における哺乳類Musashi(Msi)の機能を明らかにするためMsi2欠損マウスを作成し解析を行ったところ、Msi2欠損マウスは有意な感覚神経障害を伴っていた。中枢から末梢神経系まで詳細な組織学的解析を行ったところ、背側神経節から脊髄への感覚神経細胞の線維が減少していた。Msi2に結合する標的因子を検索したところPleiotrophin(PTN)が同定された。Msi2はPTNのmRNAに特異的に結合し、その発現を転写後レベルで促進していた。Msi2欠損マウスではPTN蛋白質量の有意な減少を認めたため、本年度はPTN欠損マウスの温痛覚・触覚の軸索投射異常の解析および、感覚神経の異常を検証する行動学的実験を行った。神経発生の際に3種類の感覚神経のうち、一部の感覚神経線維が、脊髄後角の本来投射するべき層とは異なる層へ神経線維連絡していることを組織学的・電気生理学的な解析によって確認した。今年度は、PTN欠損マウスの触覚や温痛覚異常を検出する行動学的解析も実施し、これまでに我々が明らかにしてきたMsi2欠損マウスの組織学的および電気生理学的な投射異常や、hotplate testやvon Frey hair testなどの感覚神経の検査による触覚神経の異常と極めて近い所見がPTN遺伝子欠損マウスにおいても観察された。感覚神経ネットワーク形成の発生学的メカニズムにMsi2およびPTNが重要な役割を担っている全貌が明らかになりつつある。さらに、神経幹細胞に強く発現するRNA結合蛋白質として同定された哺乳類Msiに対して、今回ゼブラフィッシュでのMsi1の発現解析を行い、神経系の幹細胞の未分化な細胞に強く発現することを示し、Msi1の抑制による脳と目の著しい低形成の原因を詳細に解析した。
2: おおむね順調に進展している
予定していた1)PTN欠損マウスの感覚神経ネットワーク異常の解明、2)PTNおよびその受容体の発現の解析については順調に終え、最後の解析シリーズに入ろうとしており、このまま順調にいけば、期間内で論文発表できそうであることから順調であると判断している。
今後、申請時の予定通り中心3本柱の3つ目の項目である、3)PTN欠損マウスの末梢神経傷害後の再生感覚神経ネットワーク異常の解明を目指して取り組む予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (3件)
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