研究課題
慢性疼痛にも関与するとの報告がある背側神経節にある知覚神経の発生過程における、Musashi2(Msi2)蛋白質の役割について解析を行った。われわれはMsi2欠損マウスを作成し、触覚や温痛覚を評価するために、hotplate testやvon Frey hair testなどの感覚神経の検査を行ったところ、Msi2欠損マウスは有意な感覚神経障害を伴っていることが分かった。中枢から末梢神経系まで詳細な組織学的および電気生理学的な解析を行ったところ、背側神経節にある感覚神経細胞から脊髄への触覚を担う神経線維の投射が乱れ、本来の触覚受容領域への投射は減少し、逆に疼痛受容領域への投射異常が観察された。RNA結合蛋白質であるMsi2に結合する標的mRNAを検索したところPleiotrophin(PTN)が同定され、Msi2によるPTN mRNAの3’非翻訳領域への特異的な結合と、転写後レベルで発現を促進する事実を見いだした。Msi2欠損マウスではPTN蛋白質量の有意な減少を認めたため、PTN欠損マウスの温痛覚・触覚の軸索投射異常の解析および、感覚神経の異常を検証する行動学的実験を行ったところ、Msi2欠損マウスと同じ症状を呈することを突き止めた。本年度、Msi2およびPTNのダブルヘテロ欠損マウスの触覚や温痛覚異常を検出する行動学的解析を行ったところ、再び症状が同じであったことから遺伝的関連性がさらに強く示唆された。また、神経系の細胞でPTNを過剰発現させたPTNトランスジェニックマウスとMsi2欠損マウスを交配したところ、これまでの慢性疼痛症状がほぼ完全に回復したことから、知覚神経ネットワーク形成の発生学的メカニズムに、Msi2およびその下流の因子であるPTNが重要な役割を担っていることが明らかとなった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
PLoS One
巻: 8(1) ページ: e53540
10.1371/journal.pone.0053540.
巻: 7(12) ページ: e52904
doi:10.1371/journal.pone.0052904
巻: 7(12) ページ: e48480
doi:10.1371/journal.pone.0048480
巻: 7(11) ページ: e47716
10.1371/journal.pone.0047716.