本研究は,これまで研究代表者が提案してきた「予測運動表示」と呼ぶ宇宙ロボットの操作支援手法を基に,『人間の技量(スキル)を向上させる手法を確立する』ことが目的である.この手法は,視覚情報を提示することで,人間の制御則を無意識のうちに変えることで操作性を向上させることができる.予測運動表示は,不安定な系を扱う様々なスキルに対し有効である可能性があり,これを本研究により検証する.ただし,人間は視覚情報だけではなく,体性感覚や平衡感覚なども利用しているので,これらの感覚と視覚情報である予測運動表示が互いにどのように影響を与えるかが一つの焦点である.本年度は次の3点について成果を得た.①これまで見出してきた倒立振子スキルを向上させるインタフェースを検証し,非熟練者は熟練者のような安定した技量を実現し,熟練者はさらに安定した技能を実現できることを明らかにした.②鉄棒上のバランス運動という全身運動スキルに対する予測運動表示の検証を行い,従来の視覚情報だけでスキルの向上を実現することが困難であることを明らかにした.実験は,従来の予測運動表示と①で発見したインタフェースを用いて行ったが,視覚情報だけで全身のバランス能力を向上させることは困難であった.③ロボカーを用いた自動車の遠隔運転システムにおいて遠隔カメラの画角の狭さを補償するために,過去画像を拡大しながら重畳させる手法を新たに提案・開発した.
|