人が単位時間あたりにこなすことのできる仕事量を計測し、その関係の逆、すなわち単位仕事量当たりの時間を新たに定義することを目的とした研究を進めた。仕事としては、多くの人が行うものの一つとして、自動車運転を取り上げた。人の生理的活動を基準にして、運転操作時の疲労と運転操作の確実性の間に相関を見出し、それが個人を超えて年齢、性別を問わずに多くの人を対象に共通の尺度で評価できる可能性を見出した。この尺度は、日常的に比較的手軽に計測できる心拍、血流量、体表面温度から計算できる定量的なものであり、1時間以上の連続測定が可能であれば、単位仕事量当たりの時間と強い相関を持つ量として算出できる(以下「生理時間尺度」と呼ぶ)。6名の実験協力者を得て、実車による運転操作実験に基づいて、上記の生理時間尺度を個人ごとに求め、本研究で提案する方法の日常生活での有効性を検証した。検証結果では、実験室レベルの評価とほとんど同じものが得られており、日常生活での尺度として利用できることが明らかとなった。人が感じている「時間の流れ」と生理時間尺度の関連を主観評価に基づいて調べたが、これについて個人差が大きく総合的に理解することはできなかった。
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