研究課題/領域番号 |
22653083
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松崎 佳子 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (30404049)
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研究分担者 |
大場 信惠 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (00403931)
増田 健太郎 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (70389229)
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キーワード | 里親支援 / 愛着 / 臨床心理学 / 社会的養護 |
研究概要 |
平成22年度実施した里親支援アンケート調査の分析を行った。45都道府県297人の里親のプロフィールからは、元来主流であった養子縁組里親よりも、「実子もいる」が、または「育ちあがった」ので、「社会的に役に立ちたい」と言う動機で里親になった「中高年の養育里親」が多くなってきていることが伺えた。委託時のマッチングは一ヶ月を目処に行われているが、「なし」や数ヶ月かかる場合も多く、個別性が大きいことが明らかになった。そして、その委託時の状況について、「適切であった」と感じる里親が7割強であったが、「不適切であった」と感じた里親と比べ、交流回数や期間に差はなく、マッチングの適否は、面接回数や交流期間という形式的なものではなく、里子の状況、里親のコンピテンスなど個別性が高いものによることが推測された。また、児童相談所の支援は、委託時だけでなく委託後も子どもの発達段階に応じて、養育中の困りに対して継続的に求められていた。 続いて、里親への面接調査を実施し、アンケート調査に反映されない、より実感的・現実的な里親養育の現状を把握し、質的分析を試みた。面接で得られた情報をKJ法によって質的分析を図ったところ、(1)委託打診(2)交流・マッチング(3)委託・養育開始(4)里子の事情(5)支援(6)里親の価値観の6項目に分類された。委託から養育開始までは時間軸に沿った(1)~(3)下位項目をもち、養育が始まったのちは(4)里子に関わる様々な事情や背景とその里子を受け容れ、(6)養育に奮闘する里親を支える里親自身の価値観がひとつの鍵になることが示唆された。さらに里子・里親間に生じた不調を乗り切る際、あるいは養育過程での日常性を支える多方面からの支援は重要な要素であった。この作業を通して、委託時から委託以降までの現状が浮かび上がってきたものを図式化した。要素として、「絆のつながる時間、親(母親)になっていく時間」「安定した養育・養育への健康的没頭、養育意欲の高まり」「里親の力量・コンピテンス」が認められた。また、里子が抱える事情はそのヒストリーワークや実親家庭の背景など「複眼的なアセスメント」が必要とされるものであり、専門機関の支援の必要性を示唆するものでもあった。
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