研究概要 |
高度情報化社会の進展を支える、半導体素子の微細化のためには、不純物を高濃度にし,ドーピング層が10nm 以下の極浅のソース/ドレイン接合を形成する必要がある。従来の加速器を用いたイオン注入法では、超低エネルギーで、高い電流量を得る事は基本的に極めて困難である。 本研究計画では、ドーパント不純物元素を含んだ固体ターゲットにレーザー照射した際に生ずる、レーザープラズマからのイオンを、低エネルギードーパントイオン生成源として使用する。この方式では、腐食性が強く人体に有害な半導体材料ガスは使用しない。 平成22,23年度に我々は、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所において、p型ドーパントであるボロンのドーピングのため、固体B(ボロン)ターゲットを用いて、レーザー照射時に発生する、高速Bイオンの価数別の収率とエネルギー分布の測定を行った。その結果、真空チェンバーのレーザー入射口直前のレンズ位置を調整し、レーザー強度を変えることにより、B+ イオンのエネルギーピークを、極浅接合形成のためのエネルギーに適した、150eVから500eV程度の範囲で調節できることがわかった。B+イオンの強度はどのエネルギーでも、ほぼ2.2×10^12(eV・Sr)であった。 上記のデータをもとに、平成24年度は、注入装置の設計を行った。その結果によると1kV程度の高電圧パルスによって、B+イオンのエネルギーを幅10%で弁別し、さらに磁場強度分布を調整して、レーザー照射点から1m離れた直径30cmのSiウェハへの、B+イオンビームの角度広がりを±1.7°まで抑えられる見通しである。複数の同等の装置をレーザービーム軸の周りに配置することにより、1mAのイオンビームに匹敵する性能が得られる。環境負荷が小さく、効率のよい極低イオン注入法を実現させることができれば、生産現場に対する寄与は大変大きいものと考える。
|