群集挙動・交通流のモデル化は,社会基盤の動的機能の評価に有用な手法を与えるものであり,また,個々のエージェント(歩行者,車)と近傍との作用から,全体の動特性を創出する基礎を与えると考えられる.本年度は1) 群集挙動・交通流における相互作用の体系化と総括,2) 簡略化モデルの考察を行い,以下の成果を得た. 1) 群集挙動・交通流における相互作用の体系化と総括:本研究で提案したハイブリッドシステムモデルに,パーソナルスペースと呼ばれる近距離の相互作用を導入することにより,自然な滞留現象が生成できることを確認した.これらの論理により,群集の心理学的な効果を簡易に表現することが可能であり,平常時の滞留現象と避難時の混雑現象を選択的に表現することも可能になる.また,交通流モデルにおいては,車間距離に対する運転者の加減速動作が渋滞現象を引き起こすことが知られており,これらの現象の生成が初期の課題であった.本課題においては,加減速時の反応遅れを適切に定めることにより,渋滞現象への遷移がハイブリッドシステムモデルにより表現できることを示した. 群集・交通流に関する上述の成果は,エージェントの近傍の相互作用により,全体の挙動を創出する代表的なモデルと位置付けられ,一般化した大規模エージェントモデルの特徴設計を行う基礎事例と位置付けることができる. 2) 簡略化モデルの考察:群集挙動モデルから,群集の流動特性を抽出する方法を検討した.そして,システム同定法をモデルから生成した大量の入出力データに適用することにより,滞留を伴う流動現象を伝達関数により特徴づける方法を評価した.これらの結果から,本手法は流量の変化を大局的に捉える上で有用なものであり,複雑な歩行空間が単純なモデルの結合により表現できる可能性があることを確認した.
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