本研究では、数値解析手法の一つである有限要素法を用いて、寝具(特に、ベッドマットレス)の寝心地に関する数値解析(コンピュータシミュレーション)を行った。まず、産業技術総合研究所の人体寸法データベースの平均値を参照して、平均体型の人体数値モデルを作成した。次に、被験者の人体寸法を採取して、平均体型の人体数値モデルを参照して、その被験者の体型を再現した人体数値モデルを3体ほど構築した。構築した人体数値モデルを用いて、寝具の寝心地推定を行うためには、構築した数値モデルの妥当性を検証する必要がある。そこで、人体数値モデルの基になった被験者を用いて、寝具と人体間の体圧分布測定と寝具への沈み込み量測定の2種類の方法を用いて、数値モデルの妥当性を評価した。体圧分布測定ではセンサーシートを用いて頭部・胸部・腰部・脚部の重量比と最大ピーク圧に関して、沈み込み量計測では三次元位置センサを用いて寝具への最大沈み込み量と全体の沈み込み傾向に関して、実測値と数値解析結果とを比較した。比較の結果、体圧分布と沈み込みの傾向はほぼ一致しており、人体数値モデルの妥当性が確認された。 数値解析と並行して、SD法と一対比較法を用いて、寝具の寝心地や快適性・嗜好度に閥する官能検査を行った。アンケートを用いて、寝具の硬さが異なれば、嗜好度はどのように変化するのか調査した。この官能検査は、数値解析結果の意味づけにもなる。4種類の硬さの異なる寝具を用意し、20名の大学生に対して実験を行った。実験の結果、睡眠時に重視する身体部位が違うと、好まれる寝具硬さが著しく異なることが分かった。腰部を重視するグループは硬い寝具を、頚部や肩部を重視するグループは柔らかい寝具を好む傾向があった。
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