マウス小脳をモデル系として、転写因子Atoh1を発現する領域が全種類の興奮性神経細胞を、転写因子Ptf1aを発現する領域が全種類の抑制性神経細胞を生み出すことが報告されている。本研究は、転写因子Ptf1aの結合分子をプロテオーム解析により網羅的に同定することで、異なる種類の神経細胞が産み出される分子機構の解明を遂行する。研究成果として、Ptf1a結合候補分子を542分子同定することに成功した。候補分子を8分子に絞り込み、Ptf1aに直接結合する分子として6分子同定した。さらに、複数の分子が抑制性神経細胞の中でもプルキンエ細胞の細胞系譜でのみ発現するということが明らかになった。また、Ptf1aノックアウトマウスでその発現が失われるということから、Ptf1a遺伝子の下流で働く分子でも同定することができた。さらに、興奮性神経細胞の産生についても解析するためにAtoh1結合分子についても解析を行った。その結果、Atoh1ノックアウトマウスでその発現が失われる分子を同定できた。以上の結果から、プロテオミクス解析により複数の分子がAtoh1/Ptf1aの下流で興奮性/抑制性神経細胞の形質獲得に関与している可能性が示唆された。
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