研究概要 |
我々は体表に腹腔内の立体映像を投影することで一般的な開腹手術状態を仮想的に再現する透過型腹腔鏡下手術システムを構築することを目的に研究を進めている.本研究テーマでは特に低侵襲条件下で腹腔内の三次元情報を実時間で取得する手法を提案し,実現に向けた臨床実験を実施することを計画した.平成22年度の成果として腹腔内形状の計測手法の検討を行った.複数のカメラによる受動的計測手法,そして光投影とカメラを併用した能動的計測手法を対象に計測精度の比較検討を行った結果,受動的手法は対応点の個数,精度に欠け,再現された三次元形状の精度は低くなった.そこで能動的手法に焦点を当てて計測精度を向上させるために既存アルゴリズムの改善を行った.誤差発生の主要な要因であるフェーズアンラップ処理を必要としない手法を提案し,加えてハードウェア並列演算による実時間処理を実現した.その結果,人体体表のような動きのある物体においても高精度に三次元形状を計測することができた.さらに,映像投影と形状計測を同じプロジェクタを使って行うための基礎技術を提案した.形状計測のための構造光を映像に埋め込むことで,体勢の変更や呼吸性の体表形状の変動に対応したリアルタイム形状補正画像投影技術を確立した.映像に埋め込む構造光の知覚量と形状計測の精度がトレードオフの関係となるため,主観評価実験を行い最適なパラメータを決定することができた.将来的にはプロジェクタの投影速度(リフレッシュレート)が向上することで,提案した構造光の埋め込み技術がさらに有効に機能すると考えられる.
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