紫黒米は、色素成分として抗酸化能をはじめ様々な生理機能を有するアントシアニンのシアニジン3-グルコシド(C3G)を含有するため、紫黒米を調理・加工した食品は機能性食品としての利用が期待される。さらに、米は小麦粉の代替品として消費拡大が図られている。しかし、紫黒米のアントシアニンの調理・加工後の機能性は十分理解されていない。本研究では、.紫黒米粉食パンを作成し、紫黒米粉食パンの機能性食品としての有効性について、加工から摂取後の生体内での効果の検討を目的とした。本年度は紫黒米を用いて食パンを作製し、製パンによるC3Gの挙動を解析した。 紫黒米にはおくのむらさきを用い、湿式製粉した黒米粉を強力粉に対して0、10、20、30、40%配合したパンを焼成した。比容積の測定、物性測定、および官能検査により製パン性を評価した。30%以上の配合により比容積が低下した。物性測定では、黒米粉の配合割合の増加に従って硬さ、凝集性、付着性が上昇した。官能検査は、味や触感など11項目について5段階評点法および順位法にて評価した結果、黒米粉20%配合で評価が高く、小麦粉100%と同等の嗜好性を有した。以上の評価から、黒米の最適な製パンの配合条件は20%であることが明らかになった。 次いで、パンを凍結乾燥後に粉砕した試料の酸性エタノール抽出液における有効成分としてC3G及びその熱分解産物であるプロトカテキュ酸(PCA)をHPLCにより分離・定量した。C3Gは、製パン後には約20%に減少し、一方で分解産物のPCAは約5倍に増加した。この現象は、紫黒米の炊飯によるC3Gの挙動と同様であった。さらに、標準品の熱安定性は、C3Gが100℃で15分の加熱によりPCAが生成されるのに対し、PCAは8時間の加熱でも安定であった。これらの結果は、C3Gの調理・加工後の機能性を評価する上でPCAが重要な成分であることを示すものである。
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