本研究では、美術作品のメディウムを同定する1手段として、クロスセクション上でのメディウムの染色法を再検討した。自作の絵画資料および経年した絵画作品から採取した試料で作ったクロスセクションについて、乾性油と膠の同定が可能かどうかを調べたところ、蛋白質を染めるAB3(中性アミノブラック)と酸性フクシン溶液では経年した膠でも同定できるが、油脂を染めるスーダンブラックBおよびオイルレッドO溶液では、経年した乾性油の同定はできないことがわかった。スーダンブラックは新しい膠の試料でも経年した膠の試料でも表面を荒らして付着する傾向があり、メディウムの判定を誤る可能性が高いこともわかった。また、この研究の過程で、西洋美術館所蔵の絵画作品の地塗りに使用されている顔料やメディウムを明らかにすることができた。
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