最終年度はまず昨年度の成果(鉄スクラップやアルミニウムスクラップのように,リサイクル中に銅や鉄といったトランプエレメントが不可避的に混入し,自然鉱石から製錬する場合に比べ品質が低くなるような素材を対象とした分析)投稿論文として投稿した. さらに最終年度では,TMRを別の視点から捉えると「ある材料を得る場合にどの程度資源端(鉱山や油田など)を開発したのかを重量で表す指標」と解釈できることに注目した.すなわち,対象とする材料や製品についてTMRを求め,それを国別に分解・分析することで,それらを生産する際にどの程度諸外国の資源端を開発したのかを重量という単位で包括的に評価できることになる.そして全TMRに対する,国内のTMRの割合を推算することで,わが国の自国資源端利用率,すなわち広義の自給率を評価できることを見いだした. 日本における粗鋼製造と鉄スクラップについて評価を行った.粗鋼の場合,鉄鉱石とコークスはほぼ100%外国に依存する一方で,ライム(石灰石)は日本でほぼ100%自給している.そして日本で1kgの粗鋼を製造しようとすると,8.4kgに相当する資源端が開発され,このうち日本は0.9 kg/kgを自国の資源端で賄っていることが分かった.これは全体の11%に相当する.つまり,日本の粗鋼製造における包括的な自給率(諸外国への包括的な依存性)は11 % (89 %)ということが明らかになった.一方,築物由来鋼材スクラップ(電炉で溶解するまでを考慮)の都市鉱石TMRは4.5 kg/kgと推算され,そのうち日本の占める割合は80%であった.鋼材スクラップ自身は100%国内資源と見なすことが可能であるが,リサイクルのための輸送や電炉プロセスに必要な物質投入を考慮すると,20%は国外に依存していることが分かった.
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