研究課題/領域番号 |
22710161
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井ノ口 宗成 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 助教 (90509944)
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キーワード | 被災者台帳 / 生活再建支援 / GIS / 業務量分析 / 資源量推定 |
研究概要 |
H23年度では、被災者生活再建支援に関わる業務量の分析結果から、業務運用に必要となる実務者の専門性・技術および資源量の関係分析をおこなうこととしていた。しかし、同年に東日本大震災が発生したことにより、H22年度までの研究成果の精緻化をはかり、より社会に還元するために、東日本大震災における被災地の実態分析を重ねることとした。この分析では、発災から約1年間の間において、被災者生活再建支援を進める上で、どのように空間情報を活用し状況認識を統一したか、また、どのような業務量が発生し市町村間で差がでているかを分析の対象とした。 発災から、まだ間もない被災地であるため、被災者生活再建支援の初期活動からの情報収集を可能とするために、被災者台帳システムの導入を試みた。本システムは、2007年の中越沖地震の発生後に被災地である柏崎市に導入することで、生活再建支援の過程の記録化を実現した。同様の仕組みを、東日本大震災でも導入することにより、各市町村で進められる被災者生活再建支援の過程の記録化を始めた。この記録を用いた分析により、業務量は対象市町村のみの被害程度だけで規定されず、近隣市町村の被害程度も考慮する必要があることが明らかとなった。 一方、GISを用いた分析をおこなうにあたり、被災自治体に関する各種の基礎情報を地理空間情報に変換した。また、被災者生活再建支援過程の空間情報化にむけて、各被災者の被災時住所情報を元にしてジオコーディングをおこなった。しかし、我が国の住所体系は十分な整備がなされていないために、ジオコーディングは自動化が難しいのが現状であった。2つの市町を対象として、自動化が困難な理由をパターン化し、他地域へ適用できる仕組みへと展開する基礎分析をおこなった。この分析により15種類のパターンが導出された。このジオコーディングの精度向上により、被災地で収集される様々な情報を空間情報へと変換が可能となり、さらに投入資源量との比較分析を通した関係性の解明に向けた基礎技術の確立と、基礎情報の整備が実現された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の成果の精緻化を進めるために、2011年の東日本大震災の発生にともない、新しい被災地においてさらなる情報収集を実施した。災害の発生したH23年度中に、被災自治体に対する関係の確立と情報収集のための基盤構築をすることは、今後の研究を進めるために必須と考え、優先事項として位置づけた。そのため、H23年度では研究計画上に記していた新潟県中越沖地震の事例と並行して東日本大震災の情報分析を実施したため、全体として遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度である。H22~H23年度の成果をとりまとめ、社会発信が可能となるよう仕組みの整備を進める。また、2011年に発生した東日本大震災の被災地における実態を取り入れ、これまでの研究成果の精度検証を進めることを計画している。本研究では、被災地における実態に基づいたモデル構築を対象としているため、被災自治体の協力が必要不可欠である。そのため、被災地の状況に応じて研究の進捗に影響を及ぼす可能性がある。被災自治体に研究の進捗が遅れた場合には、とりまとめに向けて研究計画の見直しをおこない、また研究体制の見直しをはかり研究協力者を募る。一方、研究が予定以上に進展した場合は、早期のとりまとめを進め、その精緻化を進めるとともに、社会発信を進めることとする。
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